日本ブリーフサイコセラピー学会

日本ブリーフサイコセラピー学会 第35回 東京有明大会
The Japanese Association of Brief Psychotherapy Annual Meeting

ワークショップ

9月13日(土) 13:00~18:00

大会ワークショップのご案内

  • 申し込み状況により、受付を締め切るコースが出てくる場合がございます。
  • 本ワークショップは、①臨床心理士資格取得後の教育・研修機会、②日本精神神経学会 専門医単位(B群)として申請予定です。
  • 申し込み後に選択コースを変更することはできませんのでご了承ください。

※ワークショップの参加申し込みは「参加申し込みについて」のページにてお願いします。

1 あつまれ ブリーフの門-セラピーがうまくなるための最初歩-
木場律志 (甲南女子大学)
法澤直子 (やまき心理臨床オフィス長崎ルーム)

 タイトルの通り、このワークショップは「ブリーフセラピーの入門編」です。ブリーフセラピーに興味がある、実践してみたいという方に、ブリーフセラピーの世界の「門」までお越しいただき、そこから一歩踏み出していただく経験を提供します。

 サブタイトルに「セラピーがうまくなる」というフレーズを入れましたが、果たして「セラピーがうまい」とはどういうことなのでしょうか? クライエントの悩みごとを解決できる、アセスメントが正確、中断(ドロップアウト)が少ない、などいろいろな考え方ができそうですが、ブリーフセラピーの講義と演習を通して、みなさまが「セラピーがうまくなる」方向に歩を進められるようお手伝いしたいと思います。

2 学校コミュニティに役立つ支援の知恵と工夫~ワークシートを用いて
黒沢幸子 (目白大学/KIDSカウンセリングシステム)

 学校コミュニティでは、コロナ過の経験からも、つながりの大切さ、協力や協働の重要性が見直されています。児童生徒・教職員・保護者、地域などの関係者がかかわり合う学校コミュニティに存在する多彩な問題/課題に対しては、原因探し・犯人探しをせずに、各々の力を相互に引き出し合い、解決の姿やゴールを共に考えて解決をつくることが重要です。しかし、現実的には誰もが多忙で時間や労力に制限があるため、現場に役立つノウハウや簡便な方法が求められていることも事実です。そこで、このワークショップでは、有効な支援を行うために実践から開発してきた種々のワークシートを用いて、児童生徒、クラス、保護者、事例検討などに役立つ対応について、ワークを通してともに楽しく学び、お互いの力と解決を発見していきたいと思います。

3 アディクションとトラウマの解決志向アプローチ
田中ひな子 (原宿カウンセリングセンター)

 解決志向アプローチ(Solution-Focused Approach)は、クライエントのリソース(能力、強さ、可能性)と将来に焦点を当てるブリーフセラピーで、シンプルな技法を用いて解決と協力関係を築き上げます。アディクション(アルコール、薬物、ギャンブル、摂食障害、インターネット、買い物、万引きなどの嗜癖)は深刻なトラウマ反応を緩和するために役立っている場合があります。また、アディクション行動のために暴力を受けている場合もあります。したがって、アディクション臨床においてトラウマ体験が語られることは少なくありません。このワークショップでは、アディクションとトラウマで悩む人たちへの支援に役立つ解決志向アプローチを講義と演習で学びます。

4 システム論から考える、当事者不在の保護者面接
赤津玲子 (龍谷大学心理学部)

 不登校やひきこもり等の相談では、当事者よりもまず保護者が窓口に来られることが多い。そんな時に、皆さんはどうされるだろう。気持ちをじっくり聞く、「アドバイスが欲しい」という期待に応えたいと悩む、当事者の状態が悪いかもと不安になる等々。様々なアセスメントや対応の仕方が考えられる。現場によって援助職がやれることと、やらなくてはいけないことのギャップにも直面するかもしれない。このワークショップでは、システム論から考える保護者面接について考えてみたい。これまで何となく取り組んでいた面接を違う方向からとらえ直してみたり、整理してみたりしながら、明日からの臨床に生かしていただきたい。

5 ボディ・マインド・リスニングで読み解く「受容・共感・一致」 
小関哲郎 (宇佐病院)

 ボディ・マインド・リスニング(BML)はあらゆる心理臨床活動のベースとなる「セラピストの今この瞬間の体験」に焦点を当てたアプローチで、セラピストが「心の視野」を広げ、元々持っている能力を発揮しやすい状態を作ることを目標にしています。今回はBMLの基本的な理論とワークの体験を中心に置きながら、後半部分ではそれに基づいて心理臨床の原点とも言えるロジャーズの受容・共感・一致を新たな視点で読み解いていきたいと思います。誰もが言葉としてはよく知っているけれども、今ではあまり顧みられなくなっている概念。それが現代を生きる私たちの臨床と実は深いところでつながっていることを感じてみましょう。

 ボディ・マインド・リスニング(BML)のワークは、少人数のグループで進めるのが基本ですが、今回のワークショップでは通常よりも人数が多くなるため、細かなやりとりができにくくなる面があるかと思います。そこで当日は全体で進めるワークに加えて、数人の方に代表で出ていただいて講師と直接やり取りしながら進めるセッションを所々で間に挟みたいと思います。このときボランティアでワークして下さる方を当日募集したいと思いますので、ぜひ積極的にご参加ください。

6 ポリヴェーガル理論をブリーフセラピーに活かす
吉里恒昭 (株式会社DMW)

 ブリーフセラピーではクライアントを含めた人を責めずに未来に向けた会話を展開し続けることも重視しています。そのためには「問題(の原因)の定義」を文脈上で意識することが大切です。本WSはブリーフセラピー的会話のヒントにポリヴェーガル理論(PVT)を使って援助的会話を展開する方法をテーマにします。PVTは1994年にスティーブン・ポージェス博士が発表した新しい自律神経の理論です。交感神経系と副交感神経系の二元論から、後者を二つに分けた(背側迷走神経系と腹側迷走神経系)三つの自律神経系で捉えることが大きな特徴です。P循環(東豊,2021)を含めた解決構築にPVTを活かせるようロールプレイ等も参加者同士で行います。初学者も大歓迎です。

7 支援力を高める対話の場―スーパービジョンで深めるセラピストの技術
久持 修 (やまき心理臨床オフィス)
久保山 武成 (ルバート心理カウンセリング)

※このワークショップは「スーパービジョン」をテーマにしていますが、スーパーバイザー対象というわけではありません

 セラピストとしての支援力を高めるためには、セラピーの理論や技法を学び身につけることだけではなく、事例を検討することによっても高められるものと考えます。 事例を検討して支援力を高めるためにスーパービジョンは非常に有効な手法であると言えるでしょう。ただ、一口にスーパーバイズと言っても、やり方は様々だと思います。 このワークショップでは、「支援力を高める対話の場」として4種類(問題志向・解決志向・リフレクティング・クイズ形式)の対話の場(事例の検討方法)を参加者に体験していただき、それぞれの対話の場の違いや有効性について考えていきたいと思います。

8 組織における連携・協働〜医療機関におけるtipsより
市橋香代 (東京大学医学部附属病院)
菊岡藤香 (東京都立豊島病院)

 皆さんはどのような組織で活動していますか?連携や協働というと機関をまたいだ活動に目が向きますが、それらを円滑に行うためには自組織内での動き方が重要になります。本ワークショップでは、医療現場での組織内連携の実践をもとに、自分を含む組織内の協働について考えます。

・不測の事態に遭遇した時
・意思決定を要する場面
・利用者と支援者の関係が良好ではない時
・支援者が対応に苦慮している場合

 ひと口に連携といっても、日々の関わりからシステム化されたものまで多様です。なぜ連携・協働が必要なのか、そもそも連携・協働とは何なのか。その核となる部分にふれながら、形だけではない組織内の連携・協働について、一緒に学びを深めていきましょう。

9 ナラティヴ分析法~その多様性とケア領域の研究での実行可能性について
宮坂道夫 (新潟大学大学院保健学研究科)

 ナラティヴ分析は一つの決まった形式ではなく、多様な方法を含む。基盤となる「ナラティヴ」という概念が多面的なものであり、そのどの側面に着目しても「ナラティヴ分析」となり得るからである。それでも、一定の系統的な分類は可能であり、本ワークショップの前半ではこれを解説する。その一方で、研究者にとって査読を経て論文が学術誌に掲載されるための方略を考えることも重要であり、実際に学術誌に掲載された論文を例示しながら、ケア領域での研究におけるナラティヴ分析の類型や具体的な手順を具体的に考える。その上で、参加者からの質疑を受けて、対話をしながら、データの収集と分析、考察の進め方などについて、具体的に考える機会としたい。

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